【『神』についての諸々】

『神』についての諸々


『神ノ禍』というのはタイトルの通り、『神により起こされた禍い』の物語です。つまり、『神』という存在が重要になってくるわけでございます。

この物語には大きく分けて二つの種類の神が登場します。ひとつは『“概念”としての神』、もうひとつは『“種族”としての神』です。そして、更に『“種族”としての神』は低位、中位、上位、高位の4つに分類されます。お狐リシュは中位の神、お節介やきの竜神カリスは上位、時司のアリアンフロドと混沌のキミアは高位にあたりますね。

……というのは一旦措いておいて、『概念』と『種族』の大きな違いは簡単に言えばひとつだけ。実在しないか、するかの差です。


『“概念”としての神』は文字どおり概念でしかなく、あくまで神話の中でのみ語られる存在です。主神《秩序》を初めとする開国神話の六大女神がこれに該当します。

ただしこの物語において語られる『“概念”としての神』に、私たちがよく知る神話 (古事記、オデュッセイア、ギルガメッシュ叙事詩など) は含まれません。あくまでシアルン神国の神話、開国神話に登場する神々だけです!!

なので、実存する宗教で崇められているような神々は含まれないのです。シアルン神国の神話に登場する女神さまは架空なので存在しませんが、実存する神話や宗教の神々が絶対に居ないとは誰も証明出来ないでしょう? ──……というわけなのです。


そして『“種族”としての神』はそのままの意味で、種族として存在する神々のことです。

この件については、ふりーむ!にて配布中のフリーゲーム「エールケディスの旅人」のC-2endクリア後のおまけイベントの中で、遺跡の管理者アルバが少し言及しているのですが……── 一概に種族と括るには、少々個体差がありすぎる存在なのです。リシュのような九尾の狐もいればカリスのような竜もいて、キミアのようなカラスがいれば、アリアンフロドのように姿かたちを持たない者も居るのですから。

そして前述したように、種族としての神は『低位』『中位』『上位』『高位』の4つに分類されています。

低位の神というのは主に、死んだものの魂を指します。死神 (=十武神、冥神ルヌレクタル) によってまだ滅せられておらず、世界を漠然とさ迷っている状態なのです。簡単にいうと、幽霊です。またごく稀に、生けるものの強い思い (祈りなどの信仰心、恨みなどによる怨嗟など) がある一定の場所に長いこと積み重なり続けた結果、そこに紛い物の魂が生まれることがあります。自然信仰の中に生まれた神、妖精や妖怪などが該当するんでしょうかね? それも低位の神に含まれます。

それででして、低位の神というのは中位、上位の神々にはひどく嫌われています。なにせ神でも使命を帯びていなければ役目も特にない存在なので、何をしでかすのかが予測できないのです。あるものは守護霊やら守り神となったりするのに対し、悪霊になったり悪魔まがいの真似をしたり。厄介者、という言葉がしっくりくるかと思われます。

そして、中位の神。これは世界が動き出してからある程度の時間が経過した頃に、必要に応じて創造主が造り出した存在です。上位ほど強い力は与えられておらず、それほど重要な役目を帯びているというわけでもありません。なのでリシュのように怠けているものが多かったり。

……と、ここで出てきた言葉。創造主。これについては、ここでは語らないでおきます。同じ世界観を共有する別シリーズ、空中要塞アルストグランやエールケディスの旅人などのどこかで、いつか語るときがくるでしょう。

そんでお次は上位の神。これはつまり、十武神のことを指します。高位の神を補佐する役として、割りと早い段階で造り出された神たちです。あるものは魂を造り、あるものは肉体を与え、あるものは大地を造り、あるものは生命を育み、あるものは知をもたらして、あるものは命をほふり……──などなど、重要な役目を与えられているものが多いです。が、カリス以外はその機能を失いつつあるようです、ね……。


(追記:本編の中で十武神は「高位の神」と書かれていたような気がしますが、あれは誤植です。ごめんなさい。いつか修正します。)


そして最後は高位の神。これはアリアンフロドとキミアだけです。創造主が最初に造り出した存在であり、神々の頂点に立つものです。絶対のものと絶対を否定するもの、ひとつの予定調和に導くものと複数の可能性を示唆するもの、時間を回すものと止めるもの、終わりを選ぶものと拒むもの……と、まあ、とにもかくにも正反対。仲が悪くないわけがない。なにせ対極になるように造り出したものたちですからね。

ですが、キミアはおいたが過ぎる神さまでして。次第に創造主に嫌われ、とんでもない目に遭わされた模様 (翠玉のフォノグラフ、下巻を参照) 。そしてキミアのほうにも創造主に対する不満が募り……この物語の舞台、シアルン神国が生まれたというわけです。


──……神のあれこれに関する覚え書きは、とりあえずこんなもんかなぁ。

そもそも『神ノ禍』という物語は、それ単独だけでは成立しない、不明な点が多く残るようにあえて書かれた物語です。なので分からないことは、同作者の他作品を追っていただければ、と。

まあ、そんな感じです。