エールケディスの旅人U

下:黄金の魔女と信天翁

 拝啓。
 誰の許にこれが渡るかなんざ見当も付かないが、それでもこの書面をここに遺す。

 あれから、長い年月が無常にも流れた。
 俺の時間は皮肉にも止まったままだが、この世界に流れる大いなる時間は、その動きを止めることは決してないだろう。

 かつては無理だと言われていた計画も、今では着々と完成に向かっている。
 悪魔の光から創られる生命も、昔と比べりゃ随分と簡単に錬成できるようになっちまったようだ。
 そして紛い物の命は、今この瞬間にも大量に生み出され、大量に死んでいっていることだろう。
 俺も、変わっちまったもんだ。昔は、誰が死のうがなんとも思わなかったってのにな……。

 さあ、これを読んでいる貴様。お前は、今の世界を見て何を思う?
 親を持たない哀れな生命たちに、どのような言葉を掛ける?
 彼女たちを、どのような目で見つめる?

 もし、この紙切れに目を通しているのなら。
 大声で叫べ、いくつもの名を持つ信天翁の死神の名を。

 奴なら、きっと……――。