エールケディスの旅人U

上:旅の賢姫と白猫パヌイ

 拝啓、あなたへ。
 あなたに届くことはないと分かっていますが、それでもこの手紙を書かせてください。

 あれから、長い年月が無常にも流れていきました。
 私の時はあの日から止まったままですが、世界に流れる大いなる時間は、その動きを止めることはありません。

 かつては貧相だったユダレストも、今では見目麗しい輝かしい都になりました。
 私とあなたの子は、美しく聡い娘へと成長しました。
 西のエルフたちは、かつては存在していた愚かな王子の存在を覚えてなどいないでしょう。
 私も、変わりました。あの日に受け入れた“女王”という肩書が、私から自由を奪っていきました。

 あなたは、今の世界を見て何を思うのでしょうか。
 あなたは、父の顔を知らぬ娘に、どんな言葉を掛けるのでしょうか。
 あなたは今の西のエルフたちを、どんな目で見つめるのでしょうか。
 あなたは今の私にどのようなことを思い、どんな言葉を掛け、どんな目で見つめてくるのでしょう。

 いつか、また巡り合えたのなら。そのときに。
 私もいずれ、あなたの居る場所に向かいますから。そのときに。

 そのときに、私に教えてください。